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Beaujolais nouveauという祝祭日【再掲】【加筆】

2014年のブログを再掲しました。最後に加筆。
この時の思いと伝えたいことと今も変わりはありません。でも、なかなか伝わらないですねえ。地道に身近から続けています。
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熱狂でもなく嘲笑でもなく。ボージョレ・ヌーヴォーは、1年に1度のワインの楽しい祝祭日。ただただ、それでいいんじゃないか。
静かにしみじみとでも仲間と楽しくでも、パーティイベントに出かけるのもいい。いわゆるワイン愛好家の中でも、ヌーヴォーの日は穏やかではない。嘲笑派と熱狂派とでもいうのだろうか。僕は、そのどちらも肌に合わない。百年に一度とか、近年稀にみるとか、そういうキャッチーな言葉を巡っての論争や嘲笑などどうでもいい。そこに、いつもの生産者が、いつものように、今年も新しいワインを届けてくれる。私はこれが好きなんですという酒屋さんの微笑みを見ることができる。ブドウの収穫が足りない年に、その生産者は、さてどんなワインを作るんだろう?100年に1度と喧伝される年にあの生産者は自分のスタイルを崩さずにおもしろいワインを届けてくれるんだろうか?そんなわくわく感で、11月第3週木曜日を迎える。
七草粥でも土用の丑の日でも初詣でもいいし、4年に1度のワールドカップを熱狂と嘲笑で迎える人が、今度は立場を入れ違えてハリーポッターやアニメの新作に対して熱狂や嘲笑の立場を変える。どっちだっていいじゃないか。敬老の日に先達に感謝するように、クリスマスにケーキを買うように、ボージョレ・ヌーヴォーという祝祭日。楽しく迎えようじゃないか。

ジョルジュ デュブッフ ボジョレー ヌーヴォー (コノスル ピノ・ノワール 2013

バラック・ド・ラ・ペリエール ボジョレー ヌーヴォー
バラック・ド・ラ・ペリエール ボジョレー・ヴィラージュ ヌーヴォー
ドメーヌ・ドゥ・ラ・マドンヌ ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーボー
シリル・アロンソ PUR ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーボー
ポール・サパン ボジョレー・ヌーヴォー キュヴェ・トラディション
フィリップ・パカレ ボジョレー・ヴァン・ド・プリムール
ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー ルイ・テット キュヴェ サントネール

今回は、ボージョレとボージョレ・ヌーヴォーとどう違うの?ヴィラージュってなに?といったことから、ワインメイカーのスタイルによってこれだけヴァリエーションがある、そして和食や豚肉その他気軽なマリアージュの紹介など、そしてなにより僕が思うヌーヴォーとボージョレに対する想いをもって案内させていただいた。
いわゆる王道的なデュブッフとチリのピノ・ノワールの飲み比べ(ブラインド)、同じワインメイカーのボージョレとボージョレ・ヴィラージュの飲み比べから、2つの信頼できる酒屋さんの推薦による4本、最後に、ルイ・テットを心行くまで
フィリップ・パカレは「来年の今頃このワインを飲んでもいい」のけぞる出来栄え、マドンヌのまろやかなバランス、シリル・アロンソの鮮烈さがチャーミングなアシッド、ポール・サパンの思わず「あ、旨い」というシンプルな感激

あんなもの、でも、絶対飲むべき、でもない、もっとリラックスした気持ちで。ワインを口にしたときに口にする感想以外は、テーブルで華が咲くのはお互いの今の話だったり、新しい交流だったり。ボージョレ・ヌーヴォーはプロでもない限りは眉間にシワなんか寄せて飲んじゃだめだ。明るい笑顔、楽しい話題、幸せなテーブルが生まれる、年に1度のワインの祝祭日。繰り返して書くけれど、ただただ、そんな日でいい。

(画像の下から2021年の加筆)

こちらは今年、2021年のラインアップ。
昨年はコロナ環境下ということで友人たちとこの時間をシェアできなかったが、今年は再開。トランの3種類、ダミアン・コクレのヌーヴォーとヌーヴォーではないモルゴン、そしてドミニク・ローランの2種。ガメイというひとつのブドウ品種でもこれだけの表現であったり、出来の違いがあるという、当たり前だけれどそれを実感できるものだった。

日本においてはそれでもボージョレ・ヌーヴォーが最初のワインとのコンタクトであることが多く、これだけをもってワインのすべてと判断されてしまうということもある。あくまでも「フランス」の「ボージョレ地区」の「ガメイというブドウ品種」を使った「新酒」ではあるのだけれど、それが「すべて」になってしまうこともあるだろう。「輸送費やコスト」が通常のワインよりもかかり、500円のワインが2000円になってしまうということや、生産の半分が日本に行くことなど、嘲笑のネタはふんだんにあるけれど、それもまたお祭り。ワインの多様な、自分にあったワインに出会うためのひとつの扉であって、これが「すべて」ではない、ということを言い続けながら、また、毎年のこの日を楽しみたい。