「いえいえ結構です。またの機会で(ここでそんなにいいワインができるとは思えないんで)」そういって2度訪問を断ったまだ立ち上がったばかりのワイナリー。あれから10年、このワイナリーはきらめきを放ち、評価を高め、次の一歩に歩み始めている。3度目、何かの確証を持っていたその人のもう一度のお誘いを断っていたら、ただ唇をかんで悔しくこの歩み見ていたことだろう。訪れたワイナリーから眺める素晴らしき湾の光景、海からと日本を代表する銀嶺から降りてくる心地よい風にそよぐ丘の芝。そこで味わうワインの静かで鮮烈な衝撃。そこからワイナリーの収穫祭の企画、MCにかかわって来られたという幸せ。この地に来なければわからないこと。頭や今ある自分の中だけの知識や常識で偉そうにものを言う自分を軽やかにぶっ叩いてくれる体験。そのワイナリーは富山・氷見、セイズファームという。
おそらくこれから同じように、あの時行ってよかった、10年もたってしみじみと振り返ることができるのではと、過剰で過大かもしれないけれど、あのころを思い出す場所に立った。2024年9月、陸前高田。湾を見下ろす小高い畑。その名は『ドメーヌミカヅキ」